住む人がいなくなった実家を売りに出そうと不動産会社に相談したところ、「古家付き土地として売り出しましょう」と言われて戸惑った、という方は少なくありません。
Yahoo!知恵袋にも「古家付き土地とは普通の中古住宅と何が違うの?」「古家付きのまま売ると、あとから買主から責任を問われない?」「解体費は売主と買主のどちらが払うの?」といった相談が寄せられています。建物を壊すのか残すのかで、費用も税金も売れ方も変わるため、迷うのは自然なことです。
古家付き土地は、建物の価値がほとんどない家を、土地としての価値を中心に売り出す方法です。売主は解体費を先に用意しなくてよい反面、契約不適合責任や買主の解体費負担による値引きなど、知っておきたい注意点があります。
本記事では、古家付き土地の意味、更地にして売る場合との違い、契約不適合責任の考え方、買主が負担する解体費の目安、売却の進め方までを順番に解説します。実家じまいを進める40〜60代の方が、納得して売り方を選べるようにまとめました。

古家付き土地とは?意味と中古住宅との違い
この章のポイント
- 古い建物が建ったまま売られる土地のこと
- 建物の価値はほぼゼロとして扱われる
- 買主は建物を壊して新築する前提が基本
古家付き土地とは、築年数が古く、建物そのものにほとんど資産価値がない物件を、「古い家が建っている土地」として売り出す形態を指します。不動産の広告では「古家あり」「現況古家」といった表記で出ていることもあります。
法律で「築何年以上が古家」と決まっているわけではありません。一般には、木造住宅で築30年から40年を超え、買主が住宅としてそのまま使うことを想定していない物件が、古家付き土地として扱われやすい傾向があります。
中古住宅との違いは「建物に価値を見るか」
中古住宅として売る場合は、建物の状態や設備を評価に含めて価格をつけます。古家付き土地の場合は、建物の価格をほぼゼロとみなし、売買代金は土地の価値を中心に決まります。
古家付き土地では、買主が建物を解体して新築することが多く、売却の際に売主が建物の修繕や設備の交換をする必要は基本的にありません。この点が、売主の立場では手間と費用を抑えやすいところです。
古家付き土地と更地の違い
| 項目 | 古家付き土地 | 更地 |
|---|---|---|
| 建物 | 古い建物が残っている | 建物がなく、土地だけの状態 |
| 解体費の負担 | 買主が解体するのが一般的 | 売主が先に負担する |
| 売り出し価格 | 更地相場から解体費相当を差し引く傾向 | 更地としての相場で設定しやすい |
| 固定資産税 | 住宅用地の特例が続く | 特例が外れて土地の税額が上がる |
| 買主の見え方 | 内覧で建物の傷みが目に入る | 土地の広さや形が分かりやすい |
同じ土地でも、古家付きと更地では見え方が変わります。どちらが有利かは、土地の立地や建物の状態、売却までの期間によって違ってきます。
知恵袋に寄せられた声
Yahoo!知恵袋には、次のような悩みが投稿されています。
- 築45年の実家を売りたいが、解体費を先に出す余裕がない
- 不動産会社から古家付きで売ると言われたが、値段が下がるのではと不安
- 解体せずに売って、あとから問題が出たらどうなるのか心配
回答では「解体費を出せないなら古家付きで売る選択はよくある」「契約書で現況渡しにしておくことが大事」「複数の不動産会社に査定を頼んで比べるとよい」といった助言が目立ちます。
古家付きで売る場合と更地にして売る場合の違い
この章のポイント
- 古家付きは売主の持ち出しが少なく早く動ける
- 更地は買主から好まれやすいが解体費と税負担が先に発生する
- 土地の条件によっては古家付きのほうが有利になる
古家付きにするか更地にするかは、売主が最初に迎える大きな分かれ道です。それぞれの特徴を、費用と売れやすさの両面から整理します。
古家付きで売るメリット
古家付きで売る最大のメリットは、解体費を売主が先に用意しなくてよいことです。木造30坪の家の解体費は、100万円から150万円程度が一つの目安といわれます。この金額を先に払わず、売却代金から調整できるのは大きな利点です。
建物が残っていれば、固定資産税の住宅用地の特例も続きます。土地の固定資産税が軽減されたまま売却活動を続けられるため、売れるまでに時間がかかっても税負担が急に増えません。
買主が「リフォームして住みたい」「古民家として活用したい」と考えるケースでは、建物が残っているほうが選択肢が広がり、更地より関心を持たれることもあります。
古家付きで売るデメリット
デメリットは、買主が解体費を負担する前提のため、その分を見込んだ値引き交渉を受けやすいことです。内覧のときに建物の傷みが目立つと、土地の印象まで悪くなる場合があります。
建物が残っているため、解体時に地中から古い基礎や浄化槽、井戸などが出てくる可能性が残ります。これらの扱いをめぐって、契約後に買主と話し合いになることもあります。
更地にして売るメリットとデメリット
更地にして売る場合は、土地の形や広さが分かりやすく、買主がすぐに新築の計画を立てられます。ハウスメーカーや工務店が敷地に建物のプランを描きやすく、売却が進みやすいことがあります。
反対に、売主が解体費を先に負担し、解体後は住宅用地の特例が外れて土地の固定資産税と都市計画税が上がります。更地にした後で買い手がつかなければ、税負担だけが続くことになります。
更地にしたあとで、建て替えができない土地だったと分かるケースもあるため、事前の確認が欠かせません。この点は後の章で詳しく触れます。
古家付き土地を売るときの契約不適合責任
この章のポイント
- 売主は契約内容に合わない部分に責任を負う
- 個人間の売買では現況渡しと免責特約を付けるのが一般的
- 知っていたのに伝えなかった不具合は免責されない
古家付き土地を売るときに、最も気になるのが契約不適合責任です。2020年4月の民法改正で、従来の「瑕疵担保責任」にかわって導入された考え方で、売買の目的物が契約の内容に合っていない場合に、売主が責任を負う仕組みです。
契約不適合責任とは
買主は、引き渡された土地や建物が契約の内容に合っていないとき、売主へ次のような請求ができます(民法562条から564条、566条)。
- 追完請求(修補や代替物の引渡しを求める)
- 代金減額請求
- 損害賠償請求
- 契約の解除
買主が不適合を知ったときから1年以内に売主へ通知しないと、原則として責任を追及できなくなります(民法566条)。通知期間は、契約書で短く定めることも可能です。
現況渡しと免責特約
古家付き土地の売買では、「現況有姿のまま引き渡す」という現況渡しの契約が一般的です。建物の雨漏りやシロアリ、設備の故障などがあっても、そのままの状態で引き渡すという合意です。
個人が売主の場合は、契約書に契約不適合責任を免除する特約や、責任を負う期間を引渡しから3か月程度に限る特約を入れることが、広く行われています。建物の状態を詳しく調べない代わりに、価格を抑えて売るという考え方です。
免責にしても責任を負うことがあるケース
免責特約を付けていても、売主が知っていながら買主へ告げなかった事実については、責任を免れることができません(民法572条)。雨漏りがあると知っていたのに黙っていた、境界について隣地と争いがあったのに説明しなかった、といった場合です。
売主が不動産会社などの宅地建物取引業者である場合は、宅建業法により、責任を負う期間を引渡しから2年未満にする特約が認められていません。個人が売主となる実家の売却とは、ルールが異なります。
| 売主の種類 | 契約不適合責任の特約 | ポイント |
|---|---|---|
| 個人(実家の売却など) | 免責や3か月程度の期間限定が可能 | 知っていた不具合は必ず伝える |
| 不動産会社(宅建業者) | 引渡しから2年以上とする特約のみ可能 | 免責特約は認められない |
トラブルを防ぐための告知のコツ
売主として身を守るには、知っている不具合を正直に伝えることが一番の対策です。具体的には、物件状況確認書(告知書)に、雨漏りやシロアリ被害、増改築の履歴、境界の状況、近隣とのやり取りなどを漏れなく書きます。
家財道具が残っている場合は、売却前に片付けを済ませるか、残置物の扱いを契約書で明記しておくと、引渡し後の行き違いを防げます。
買主が負担する解体費の目安と価格への影響
この章のポイント
- 解体費は構造と広さと立地で決まる
- 木造30坪で100万円から150万円程度が目安
- アスベストや地中埋設物があると追加費用になる
古家付き土地では、買主が自分で解体業者を手配して費用を払うのが一般的です。その分は売買価格に織り込まれるため、売主の側にも無関係ではありません。
解体費の相場感
解体費は、建物の構造、延床面積、前面道路の広さ、家財の有無などで変わります。木造住宅でおおむね1坪あたり3万円から5万円が目安とされ、30坪なら100万円から150万円程度です。鉄骨造や鉄筋コンクリート造は、木造より高くなります。
| 構造 | 1坪あたりの目安 | 30坪の場合の目安 |
|---|---|---|
| 木造 | 3万円〜5万円 | 90万円〜150万円 |
| 鉄骨造 | 4万円〜6万円 | 120万円〜180万円 |
| 鉄筋コンクリート造 | 5万円〜8万円 | 150万円〜240万円 |
上の金額は目安であり、地域や時期、現場の条件で上下します。正確な金額は、複数の解体業者から相見積もりを取って確認してください。
追加費用が出やすい項目
見積もりに含まれていない費用が、解体の途中や後から出てくることがあります。代表的なものは次のとおりです。
- 家の中に残った家財道具の処分費
- アスベスト(石綿)を含む建材の調査と撤去費
- 地中から出てきた浄化槽、井戸、古い基礎などの撤去費
- 道路が狭く重機が入らない場合の人件費の上乗せ
- 庭木、ブロック塀、物置などの撤去費
令和3年4月から、建物の解体では石綿の事前調査と結果の記録・現場への掲示が義務になり、一定規模以上の工事では令和4年4月から行政への報告も必要です(石綿障害予防規則、大気汚染防止法)。調査費用は規模にもよりますが、数万円から十数万円程度が目安です。
売却価格への影響
買主は、土地の相場から解体費や諸経費を引いた金額で購入を考えることが多いため、古家付き土地の売り出し価格は更地相場より低くなる傾向があります。解体費が150万円かかる土地なら、更地相場から150万円前後を差し引いた水準が一つの目安です。
売主が先に解体して更地で売れば、その分を上乗せできる可能性はありますが、解体費と税負担を売主が先に払うため、手取りが増えるとは限りません。両方の査定を取って比べることが重要です。
古家付き土地を売る前に確認したい注意点
この章のポイント
- 再建築不可の土地は更地にしてはいけない
- 境界と測量を先に整理しておく
- 家財の片付けと登記の確認も忘れずに
古家付き土地の売却では、契約書の書き方だけでなく、土地そのものの条件も大事です。後悔しやすいポイントを確認しましょう。
再建築不可の土地は更地にしない
建築基準法では、建物の敷地は幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければなりません(接道義務)。この条件を満たさない土地は「再建築不可」となり、今ある建物を壊すと、新しい建物が建てられなくなる場合があります。
再建築不可の土地を更地にしてしまうと、買主が限られて売りにくくなります。古家付きのまま、あるいはリフォームして使うことを前提に売るのが基本です。解体の前に、市区町村の建築指導課などで必ず確認してください。
境界と測量の確認
古家付き土地でも、隣地との境界が曖昧なままでは、買主が不安になり売却が長引きます。境界標があるか、隣地所有者と境界の認識が一致しているかを、売り出す前に確認しておきましょう。
売買契約で「公簿売買」とするか「実測売買」とするかも、不動産会社と相談して決めます。測量を行う場合は、規模によって数十万円の費用がかかることがあります。
登記と名義の確認
親の名義のままになっている実家は、売却前に相続登記を済ませる必要があります。2024年4月から相続登記は義務化され、相続を知った日から3年以内に申請しなければなりません。
共有名義になっている場合は、売却にも解体にも共有者全員の同意が必要です。早めに話し合いの場を設けましょう。
税金面で知っておきたいこと
建物が残っている間は、土地の固定資産税に住宅用地の特例が適用されます。200平方メートル以下の部分は課税標準が6分の1になります。解体して更地にした場合、翌年1月1日時点の状況で、この特例が外れます。
売却で利益が出た場合は、譲渡所得として所得税と住民税がかかります。相続した空き家には、一定の条件で最大3,000万円の特別控除を受けられる制度もあります。詳細は国税庁や税理士にご確認ください。
古家付き土地を売るときの進め方
この章のポイント
- 複数社に古家付きと更地の両方を査定してもらう
- 契約書の特約を確認してから売り出す
- 解体は買主が決まってから考えてもよい
売却を進める手順を、順番にご紹介します。
ステップ1 登記と書類を確認する
まず、登記簿謄本で名義人と面積を確認し、固定資産税の納税通知書、購入時の契約書、図面、境界に関する資料などを集めます。相続の場合は、遺産分割協議書や相続登記の状況も整理します。
ステップ2 複数の不動産会社に査定を依頼する
古家付きでの売却価格と、更地にした場合の想定価格の両方を聞くと、比較しやすくなります。3社程度に依頼し、査定額だけでなく、売却の方針や根拠の説明が丁寧かどうかも見て選びましょう。
ステップ3 解体費の見積もりを取る
更地売却も候補に入れるなら、解体業者から見積もりを取ります。見積もりでは、家財の処分費、石綿調査の有無、地中埋設物の扱いまで、含まれる内容を確認してください。
ステップ4 契約条件を整える
売買契約では、現況渡しであること、契約不適合責任の免責や期間、残置物の扱い、境界の確認方法などを明記します。口頭の約束は後から食い違いやすいため、書面に残すことが基本です。
ステップ5 引渡しと解体後の手続き
買主が解体する場合でも、建物の滅失登記は所有者の義務です。解体後1か月以内に申請する必要があり(不動産登記法57条)、売主と買主のどちらが行うかを契約で決めておくと安心です。
| 手順 | やること | 目安の期間 |
|---|---|---|
| 書類の確認 | 名義、境界、図面などを集める | 1〜2週間 |
| 査定の依頼 | 古家付きと更地の両方を比較する | 1〜2週間 |
| 売り出し | 媒介契約を結び、販売活動を始める | 1〜6か月以上 |
| 売買契約 | 特約と引渡し条件を確認して契約する | 契約から1〜2か月で引渡し |
古家付き土地についてよくある質問
古家付き土地はなぜ安いのですか?
買主が解体費を負担する前提で価格が決まるため、更地の相場から解体費相当が差し引かれる傾向があります。建物の傷みや地中埋設物のリスクも価格に反映されます。
古家付きで売った後に建物の不具合を指摘されたら、必ず責任を負いますか?
個人が売主の場合は、契約書に免責特約を付けるのが一般的です。売主が知っていながら告げなかった不具合は、免責特約があっても責任を負う場合があります。告知書への記載を忘れないでください。
買主が解体費を払うなら、売主は何も費用がかかりませんか?
解体費は買主負担でも、仲介手数料、登記費用、片付け費用、測量費用などは売主の負担になる場合があります。売却の諸費用も含めて、手取りを事前に計算しておきましょう。
古家付きのまま売れなかった場合は、解体したほうがいいですか?
解体は売却が難しいときの選択肢の一つですが、再建築不可の土地では更地にした場合は売りにくくなります。建築指導課への確認と、不動産会社の意見を聞いたうえで判断してください。
古家付き土地についてまとめ
この記事のポイントをまとめます。
古家付きで売るか、更地にして売るかは、土地の条件と家計の状況で答えが変わります。まずは複数の不動産会社に査定を取り、両方の手取りを比べてみましょう。
税金や法律の細かな条件は、自治体や税理士、司法書士などの専門家に確認しながら進めてください。