空き家になった実家を手放すとき、「先に解体して更地にしたほうが売れるのか」「古い家が建ったままのほうが得なのか」で手が止まってしまう方は大勢います。
Yahoo!知恵袋にも「築40年の実家は解体してから売るべき?」「更地にしたら固定資産税が上がると聞いて不安」「解体費を出したのに安くしか売れなかったらどうしよう」といった相談が寄せられています。解体費は100万円を超えることが多く、先に払ってから後悔したくないと考えるのは当然です。
結論から言えば、解体してから売るのが正解とも、現状のまま売るのが正解とも言い切れません。土地の条件、建物の状態、売主の資金、売却に使える時間によって、有利な方法が変わります。
本記事では、解体して売る場合と現状のまま売る場合を、費用、税金、売れやすさの3つの面から比べます。そのうえで、判断の基準と、損をしないための進める順番まで具体的にお伝えします。

解体して売るか現状のまま売るか迷ったら
この章のポイント
- 先に解体するかどうかは売却の入口で決まる
- 費用・税金・売れやすさの3点で比べる
- 土地の条件によって正解が変わる
まず、2つの売り方の意味を整理します。「解体して売る」は、売主が解体費を負担して更地にしたうえで売り出す方法です。「現状のまま売る」は、古い建物が建ったまま「古家付き土地」として売り出し、解体するなら買主が行う方法です。
どちらを選ぶ場合でも、売却の相談先は不動産会社です。解体業者へ先に相談した場合、解体を前提に話が進んでしまうことがあるため、売り方の方針が固まる前に見積もりだけ取るつもりで動くと失敗しにくくなります。
知恵袋に寄せられた声
Yahoo!知恵袋には、次のような悩みが投稿されています。
- 解体費を出す余裕がなく、現状のまま売るしかないのか悩んでいる
- 更地にしたあとで売れ残り、税金だけ払い続けるのが怖い
- 不動産会社ごとに「解体したほうがいい」「しないほうがいい」と意見が分かれた
回答では「不動産会社によって意見が違うのは普通」「複数社に古家付きと更地の両方で査定してもらう」「再建築不可かどうかを先に調べる」といったアドバイスが目立ちました。
費用・税金・売れやすさの比較表
この章のポイント
- 解体して売ると解体費と税負担が先に発生する
- 現状のまま売ると値引きと責任の問題が残る
- どちらも一長一短で、手取りで比べることが大切
2つの売り方を、売主の立場で見たときの違いを表にまとめました。金額は目安であり、地域や物件で変わります。
| 項目 | 解体して更地で売る | 現状のまま(古家付き)で売る |
|---|---|---|
| 解体費の負担 | 売主が負担(木造30坪で100万円〜150万円程度) | 基本的に買主が負担 |
| 売却前の資金 | 解体費を先に用意する必要がある | 不要で、すぐ売り出せる |
| 固定資産税・都市計画税 | 住宅用地の特例が外れて上がる | 特例が続き、低いまま |
| 売り出し価格 | 更地としての相場で設定しやすい | 解体費相当を差し引いた価格になりやすい |
| 売れやすさ | 新築用地として探す買主から好まれやすい | リフォームや古民家活用を考える層にも見てもらえる |
| 買主の安心感 | 土地の状態が見えて安心されやすい | 建物の傷みや地中の状況が不安材料になりやすい |
| 契約不適合責任 | 建物の責任はなくなるが、地中埋設物は残る | 現況渡しと免責特約で対応するのが一般的 |
| 売却までの時間 | 解体工事の期間(1〜2か月程度)が加わる | すぐに売り出せる |
表のとおり、解体して売る場合は「先にお金を出して、買主から見た魅力を上げる」方法です。現状のまま売る場合は「お金を出さずに早く動けるが、価格や条件で調整する」方法と考えると、イメージしやすくなります。
解体して売るメリット
- 更地は土地の広さや形が分かりやすく、買主が建築計画を立てやすい
- 古い建物の傷みが印象を下げることがない
- 倒壊や火災、不法侵入といった空き家のリスクがなくなる
- 建物に関する契約不適合責任を負わずに済む
解体して売るデメリット
- 売主が解体費を先に払うため、売れなかったときの損失が大きい
- 更地になると固定資産税と都市計画税が上がる
- 再建築不可の土地では、更地にした場合は売りにくくなる
- 解体後に地中埋設物が見つかると追加費用が発生する
現状のまま売るメリットとデメリット
現状のまま売る方法は、売主の持ち出しが少なく、すぐに売り出せることが最大の利点です。住宅用地の特例が続くため、売れるまでの税負担も抑えられます。
反対に、買主が解体費を見込んで値下げを求めてくることが多く、内覧で建物の傷みが目立つと売れ行きが鈍くなる場合があります。建物に不具合が見つかったときの責任は、契約書の特約で調整します。
解体した場合に税金はどう変わる?
この章のポイント
- 更地にした場合は土地の固定資産税が最大で約6倍になる
- 賦課期日は毎年1月1日
- 売却時の譲渡所得税は解体費を経費にできる場合がある
売り方を決めるときは、税金の違いを必ず試算してください。大きく分けて、保有している間の税金と、売ったときの税金があります。
固定資産税・都市計画税が上がる仕組み
住宅が建っている土地には、住宅用地の特例があります。200平方メートル以下の部分は、固定資産税の課税標準が6分の1、都市計画税が3分の1に軽減されます(地方税法、200平方メートルを超える部分は固定資産税3分の1、都市計画税3分の2)。
建物を解体して更地にした場合は、翌年度からこの特例が外れます。税額は毎年1月1日時点の状況で決まるため、年末に解体した場合も、翌年1月1日に更地であれば翌年度から高い税額になります。
土地の固定資産税評価額が1,200万円、200平方メートル以下の土地で、固定資産税率1.4%、都市計画税率0.3%と仮定した試算が次の表です。
| 項目 | 建物がある場合 | 更地の場合 |
|---|---|---|
| 固定資産税 | 約2万8,000円 | 約16万8,000円 |
| 都市計画税 | 約1万2,000円 | 約3万6,000円 |
| 合計(年間) | 約4万円 | 約20万円 |
この試算では、更地にした場合は年間で約16万円、税負担が増えます。売れるまでに2年かかれば約32万円、3年かかれば約48万円の増加です。税率や評価額は自治体で異なるため、正確な金額は納税通知書で確認してください。
売却時にかかる譲渡所得税
家や土地を売って利益が出た場合は、譲渡所得として所得税と住民税がかかります。譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を引いて計算します。所有期間が5年を超える長期譲渡の税率は、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて約20.315%です。5年以下の短期譲渡は約39.63%になります。相続した不動産は、亡くなった方の取得時期を引き継いで所有期間を数えます。
売るために建物を取り壊した費用は、譲渡費用として売却益から差し引ける場合があります。解体費の領収書は必ず保管しておきましょう。個別の判断が必要なため、税務署や税理士にご確認ください。
使える特別控除と期限
自分が住んでいた家を売る場合は、居住用財産の3,000万円特別控除があります。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件です。家屋を取り壊した場合は、取り壊してから1年以内に売買契約を結ぶこと、その間に駐車場などに貸さないことが要件です。
親から相続した空き家には、相続した空き家の3,000万円特別控除があります。昭和56年5月31日以前に建築された家屋であることなどの条件があり、適用期限は2027年12月31日までの売却です。詳しい条件は、相続した空き家を解体するタイミングの記事で別途お伝えします。
売れやすさで考える判断の分かれ目
この章のポイント
- 都市部の住宅地は更地が売れやすい傾向
- 地方や郊外は解体費が価格に見合わないことがある
- 土地の条件と買主像から考える
売れやすさは、立地と買主が誰かによって大きく変わります。どのような土地で更地が有利になるのか、現状のままが向いているのかを見ていきましょう。
更地のほうが有利になりやすいケース
- 住宅地の分譲用地として需要がある都市部や駅に近い土地
- 建物が傾いている、雨漏りがひどいなど、修繕して住めない状態
- 買主候補が、ハウスメーカーや工務店、建売業者である土地
- 相続した空き家の特別控除など、更地にする要件が関わる売却
現状のままのほうが有利になりやすいケース
- 再建築不可で、更地にしても新築ができない土地
- 郊外や地方で、解体費が土地の価格に比べて高くなる場合
- 建物に味があり、古民家や店舗への活用を探す買主がいる土地
- 売主が解体費を用意する余裕がなく、早く売りたい場合
買取という選択肢
古家付きのまま不動産会社が直接買い取る「買取」という方法もあります。買い手を探す時間がかからず、契約不適合責任を免除してもらえることが多いのが特徴です。価格は仲介で売る場合の市場価格より低くなるのが一般的で、目安として6割から8割程度といわれます。急ぎで売りたいときの選択肢として、頭に入れておくとよいでしょう。
解体費の目安と補助金
この章のポイント
- 木造30坪で100万円から150万円程度が目安
- アスベスト調査や家財の処分費が追加になりやすい
- 自治体の補助金は着工前の申請が必須
解体して売る場合は、解体費をどの程度に見込むかが判断の土台になります。
| 構造 | 1坪あたりの目安 | 30坪の場合の目安 |
|---|---|---|
| 木造 | 3万円〜5万円 | 90万円〜150万円 |
| 鉄骨造 | 4万円〜6万円 | 120万円〜180万円 |
| 鉄筋コンクリート造 | 5万円〜8万円 | 150万円〜240万円 |
解体費の見積もりには、次のような費用が別に必要になることがあります。
- 家財道具の処分費(業者に任せると割高になりやすい)
- アスベスト(石綿)の事前調査費と、含まれていた場合の撤去費
- 地中埋設物(浄化槽、井戸、古い基礎)の撤去費
- 庭木、ブロック塀、物置の撤去費
- 建物の滅失登記を専門家に頼む費用(4万円から5万円程度が目安)
解体費の補助金を確認する
各地の自治体で、老朽化した空き家の除却に対する補助金が用意されています。補助額は工事費の2分の1から5分の4程度、上限は数十万円から100万円前後という例が見られますが、自治体によって対象や条件が違います。
補助金は、解体工事の契約や着工の前に申請する必要がある場合が大半です。解体を決める前に、必ず市区町村の窓口で確認してください。
業者の選び方
解体業者は、建設業の許可、か解体工事業の登録を受けているか、石綿調査の資格者がいるかを確認します。3社以上から相見積もりを取り、家財処分や養生、近隣への挨拶、廃棄物の処理方法まで見積書に書かれているかを比べましょう。
迷ったときの判断基準チェックリスト
この章のポイント
- 再建築不可かどうかを最初に確認する
- 解体費を先に払っても手取りが残るかを計算する
- 売却までの期間と税負担も含めて比べる
判断のための視点を、順番に整理しました。上から確認していくと、迷いが少なくなります。
| 確認すること | 更地向き | 現状のまま向き |
|---|---|---|
| 再建築の可否 | 再建築できる | 再建築不可 |
| 建物の状態 | 傾き・雨漏りなど傷みが大きい | 修繕すれば使える |
| 土地の需要 | 分譲用地や新築需要が強い | リフォーム・活用の需要がある |
| 売主の資金 | 解体費を無理なく出せる | 解体費の用意が難しい |
| 売却の期限 | 時間をかけて売れる | 早く売りたい |
| 手取りの比較 | 更地の想定価格が解体費と税負担を上回る | 現状の価格のほうが手取りが多い |
手取りで比べる計算の考え方
迷ったときは、2つの手取りを同じ式で計算します。更地の場合は「更地の売却価格から解体費、増える税金、諸費用を引いた金額」、現状のままの場合は「古家付きの売却価格から諸費用を引いた金額」です。
解体費が150万円かかる土地で、更地の想定価格が古家付きより200万円高いなら、差し引き50万円のプラスです。更地にした場合は年間で十数万円の固定資産税が増えるため、売れるまでの期間が長引けば、プラスは減っていきます。
契約後に解体する「解体渡し」という方法
売買契約を先に結び、売主が引渡しまでに建物を解体して更地で渡す「解体渡し」という方法もあります。売主は、買主が決まってから解体できるため、売れ残りの不安と税負担の増加を避けられます。
注意したいのは、買主の住宅ローン審査が通らず契約が白紙になった場合です。解体費だけが残る恐れがあるため、ローン特約の条件や、解体を始めるタイミングを契約書で慎重に決めましょう。
解体してから売る場合の進める順番とトラブル
この章のポイント
- 査定が先で、解体の依頼は後
- 補助金は着工前に申請
- 解体後は1か月以内に滅失登記
売却を成功させる最大のコツは、順番を間違えないことです。次の流れで進めましょう。
| 順番 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 名義と共有者、再建築の可否を確認する | 親の名義のままなら相続登記を先に |
| 2 | 不動産会社3社に古家付きと更地の両方を査定してもらう | 手取りで比べられるよう条件をそろえる |
| 3 | 解体業者に相見積もりを取る | 家財処分や石綿調査まで含めて確認 |
| 4 | 補助金の有無を役所で確認する | 着工前の申請が必須 |
| 5 | 売り方を決め、媒介契約を結ぶ | 解体渡しも候補に入れる |
| 6 | 解体工事を行い、滅失登記を申請する | 解体後1か月以内に法務局へ |
| 7 | 売買契約・引渡し・確定申告 | 領収書を保管し、特例の要件を確認 |
起こりやすいトラブル
- 解体後に地中埋設物が見つかり、追加費用の負担を求められた
- 近隣への挨拶が不十分で、騒音や粉じんの苦情につながった
- 解体前に家財を残したまま契約し、処分費が高額になった
- 建物の滅失登記を忘れ、固定資産税の通知が古い建物の扱いのまま届いた
建物を解体したら、1か月以内に法務局へ建物滅失登記を申請する義務があります(不動産登記法57条)。怠ると10万円以下の過料の対象になりえるため、解体業者から取壊し証明書を受け取り、忘れずに申請しましょう。
解体して売るか現状のまま売るかのよくある質問
更地にしたほうが高く売れますか?
更地のほうが相場を上げやすい土地もありますが、上がった額が解体費と税負担を超えなければ得にはなりません。手取りで比べることが大切です。
売れ残った場合、更地と古家付きはどちらが不利ですか?
売れ残った場合の負担は、固定資産税が上がる更地のほうが大きくなります。売れる見通しが立たないうちに解体するのは、慎重に判断してください。
解体工事はいつ依頼するのがよいですか?
売り方の方針が決まり、補助金の申請も済んでからが基本です。解体渡しにする場合は、売買契約の内容が固まってから依頼します。
解体費が高くて払えない場合は?
現状のまま売る方法のほか、自治体の補助金や、不動産会社による買取、売却代金から解体費を支払う方法を相談できる場合もあります。まずは不動産会社と解体業者に事情を話して選択肢を確認しましょう。
解体して売るか現状のまま売るかについてまとめ
この記事のポイントをまとめます。
解体してから売るか、現状のまま売るかは、どちらが得かが物件によって異なります。まずは複数の不動産会社に両方の査定を頼み、手取りの比較から始めましょう。
税金や補助金の条件は変更されることがあります。具体的な金額や要件は、自治体や税務署、税理士などの専門家に確認してください。