実家の古い増築部分だけを壊したい。2階は使わないので、平屋にして管理を楽にしたい。リフォームの前に、家の中の壁や設備を全部取り払いたい。こうした「建物をまるごと壊すのではなく、一部だけ手を入れたい」という相談が、実家じまいや相続の場面で増えています。
Yahoo!知恵袋にも「家の一部だけ解体することはできますか?」「スケルトン解体と減築はどう違いますか?」「建物の一部を壊したら、登記や固定資産税はどうなりますか?」といった質問が寄せられています。全体を取り壊す工事と違い、一部だけを壊す工事は、費用の考え方も、手続きも、注意点も大きく異なります。
一部解体は、坪単価が割高になりやすく、壊した後の切り口の補修や、構造上の安全性の確認が欠かせません。登記の変更や固定資産税の見直しといった事務手続きも、見落とすと後で面倒になります。
本記事では、一部解体・内部解体(スケルトン解体)・減築の違いと費用の目安、建物の一部だけを壊す場合の注意点、登記と固定資産税への影響を整理して解説します。実家をどう残すか、どこまで壊すかを考えている40代から60代の方の判断材料にしてください。

一部解体・内部解体・減築の違い
この章のポイント
- 一部解体は建物の一部を取り壊す工事
- 内部解体は構造を残して内装を取り払う工事
- 減築は床面積を減らす工事で、一部解体の一種
この三つの言葉は似ていますが、工事の中身が違います。まず違いを整理しましょう。
| 呼び方 | 何をする工事か | おもな目的 |
|---|---|---|
| 一部解体 | 増築部分、離れ、車庫、2階など、建物の一部を取り壊す | 老朽化した部分の撤去、敷地の有効活用 |
| 内部解体(スケルトン解体) | 外壁、柱、梁、屋根などの構造体を残し、内装や設備を撤去する | 大規模リフォームやリノベーションの前工程 |
| 減築 | 建物の床面積を減らす(2階を撤去して平屋にするなど) | 管理の負担軽減、耐震性の向上、固定資産税の見直し |
一部解体のなかで、床面積が小さくなる工事を、減築と呼びます。2階建てを平屋にする、使っていない部屋を取り払うといった工事が、減築にあたります。
内部解体は、建物の外側を壊さないため、床面積は変わりません。壁や天井、床、設備を取り外して、柱や梁などの骨組みだけにした状態を指し、スケルトン解体とも呼ばれます。
実家で一部解体を考える代表的なケース
- 昔の増築部分が老朽化し、雨漏りやシロアリが心配になっている
- 二世帯で住んでいた2階を使わなくなり、平屋に減築して管理を楽にしたい
- 敷地内の離れや古い車庫だけを撤去して、駐車スペースを確保したい
- 築古の実家を貸したり、自分たちが住み直したりするために、リノベーションの前に内部を解体したい
反対に、実家を売却して手放す場合は、建物を全部解体して更地にするか、そのまま売るかの二択になるケースが大半です。一部だけ壊した状態では、買い手が見つかりにくく、かえって費用がかさむこともあります。
一部解体・内部解体・減築の費用の目安
この章のポイント
- 一部解体は坪単価が割高になりやすい
- 内部解体は工事の範囲で金額が大きく変わる
- 減築は解体費用に加えて、屋根や外壁の補修費がかかる
一部だけを壊す工事は、建物全体の解体に比べて、坪あたりの単価が高くなる傾向があります。重機の搬入費や運搬費、養生の費用は、壊す面積が小さくても一定の金額がかかるためです。さらに、壊した後に残る建物の切り口を補修する工事が、別に必要になります。
| 工事の種類 | 費用の目安(木造) | 金額に含まれやすいもの |
|---|---|---|
| 全体解体(比較用) | 1坪あたり3万〜5万円程度 | 基礎まで含めた取り壊しと廃材処分 |
| 一部解体(増築部分・離れなど) | 1坪あたり4万〜8万円程度、切り離し・補修費が別途10万〜50万円程度 | 壊す部分の解体、廃材処分、切り口の防水・外壁補修 |
| 内部解体(スケルトン解体) | 1坪あたり2万〜5万円程度 | 内装材、設備、断熱材、間仕切り壁の撤去と廃材処分 |
| 減築(2階を撤去して平屋にする) | 150万〜500万円程度 | 2階の解体、屋根の新設、外壁・防水工事、耐震補強など |
これらの金額は、建物の構造や築年数、立地、搬出経路で大きく変わる目安です。アスベストが含まれていた場合は、調査費や除去費が上乗せされます。正確な金額は、複数の業者に現地を見てもらったうえで確認してください。
一部解体が割高になりやすい理由
一部解体では、建物がつながっている部分を丁寧に切り離す必要があります。重機が使えず、手作業で解体する範囲が増えるため、人件費が高くなります。壊した後の壁や屋根、基礎の切り口を、雨風が入らないように補修する費用も加わります。
壊す部分が小さい場合、全体の解体に比べて廃材の量は減りますが、業者にとっては、現場への出入りや準備の手間が変わらないため、最低限の工事費が設定されることがあります。見積もりでは、補修費を含めた総額で比べることが大切です。
内部解体の費用が変わるポイント
内部解体の費用は、床面積よりも、取り除く内装材の量と種類で決まります。古い住宅には、壁や天井、床材、断熱材にアスベストが使われている場合があるため、事前に調査が必要です。
内部解体の後は、柱や梁の傷み、シロアリ被害、土台の腐朽などが見つかることがあります。その場合は、補強や交換のための追加工事が必要になり、再生を断念するほど費用が膨らむ場合もあります。事前に建築士や住宅診断の専門家に調べてもらうと安心です。
減築は「壊す費用」より「直す費用」が大きい
2階を撤去する減築は、壊す作業そのものよりも、壊し終えてからの屋根の新設や、外壁・防水の補修、耐震補強に費用がかかります。建物の構造を変える工事のため、設計や構造の確認を行う建築士に依頼するのが一般的です。
減築を行うと、建物の重量が減って耐震性が高まる、掃除や管理が楽になる、固定資産税が下がる可能性がある、といった利点があります。反対に、費用が高額になり、元の部屋数には戻せなくなる点も考えておきましょう。
建物の一部だけ壊すときの注意点
この章のポイント
- 構造のバランスと耐震性を建築士に確認する
- 隣家と接している建物は特に慎重に
- 建築確認の要否、アスベスト調査、届出を事前に確認する
一部を取り壊した建物は、壁や柱の配置が変わり、耐震性に影響が出ることがあります。壊した後でも安全に使い続けられるか、事前に確認しておく必要があります。
- 構造のバランス:壊す部分が建物を支えている場合、壁や柱の補強が必要になる
- 雨漏り対策:切り離した部分から雨水が入らないよう、屋根・外壁の防水処理を確実に行う
- 隣家との関係:長屋や連棟の建物は、壁を共有していることがあり、隣家への影響を事前に調整する
- ライフライン:給排水管や電気配線が壊す部分を通っていないか確認し、切り回しの工事を行う
- 住宅ローン・保険:残債がある場合は金融機関へ、火災保険は保険会社へ変更を連絡する
建築確認申請や届出が必要になる場合がある
建物の一部を壊すだけの工事でも、規模によっては、手続きが必要になります。建設リサイクル法では、解体する部分の床面積の合計が80㎡以上の場合、工事の7日前までに自治体への届出が必要です。
減築のように、主要な構造部分を大きく変える工事は、建築基準法の「大規模の修繕・模様替え」などに当たり、確認申請が必要になるケースがあります。2025年4月の法改正で、木造2階建て住宅などの確認申請の扱いが変わったため、最新の取り扱いは、建築士か市区町村の建築指導課に確認してください。
アスベストの事前調査は規模にかかわらず必要
解体や改修の工事では、石綿障害予防規則と大気汚染防止法にもとづき、工事の前にアスベスト(石綿)の有無を調べる事前調査が、工事の規模にかかわらず義務づけられています。2023年10月からは、有資格者が事前調査を行うことになりました。
内部解体は、アスベストを含む内装材や吹き付け材を取り除くことが多く、調査の結果によっては、除去の費用が大きく増えます。業者が有資格者による調査を行っているか、結果の報告書をもらえるかを確認しましょう。
住み続ける場合の工事の負担
親や家族が住み続けながら一部解体や減築を行う場合は、工事中の騒音や粉じん、水道や電気の一時停止、仮住まいの要否も考えておく必要があります。特に2階の撤去は、屋根を開けて工事を進めるため、天候による工期の遅れや、雨養生の費用がかかります。
高齢の親が暮らす家では、工事中の生活の負担が大きくなります。家族が一時的に別の場所へ移る場合は、引っ越しや仮住まいの費用も含めて、総額で計画を立てましょう。
実家の将来を決めてから工事を依頼する
一部だけ壊してみたものの、数年後に結局全体を解体したり売却したりすることになると、最初の工事の費用が無駄になることがあります。実家を誰が使うのか、貸すのか、売るのかという方針を、家族で先に話し合ってから、工事の範囲を決めましょう。
方針がまだ決まらない段階では、まず建物の状態を診断し、修繕や解体の必要性、おおよその費用を確認するだけでも、判断の材料になります。
一部解体・減築と登記・固定資産税への影響
この章のポイント
- 建物の面積が変わると、登記の変更が必要になる
- 取り壊しから1か月以内の申請が義務
- 固定資産税は、翌年1月1日の状況で見直される
登記の変更が必要になるケース
建物の登記簿には、床面積や構造、建物の種類が記録されています。一部解体や減築で床面積が変わった場合は、不動産登記法にもとづき、変更があった日から1か月以内に、建物表題部変更登記を申請する義務があります。
| 状況 | 必要な登記 | 申請先と期限の目安 |
|---|---|---|
| 建物の一部を取り壊した(減築・増築部分の撤去) | 建物表題部変更登記 | 法務局へ、変更から1か月以内 |
| 登記された離れ・車庫など附属建物を取り壊した | 建物表題部変更登記(附属建物の滅失) | 法務局へ、取り壊しから1か月以内 |
| 建物全体を取り壊した | 建物滅失登記 | 法務局へ、取り壊しから1か月以内 |
| 内部解体のみで床面積が変わらない | 原則として登記の変更は不要 | 内容によっては確認が必要 |
登記を怠ると、10万円以下の過料の対象になる場合があります。登記の手続きは、土地家屋調査士に依頼するのが一般的で、報酬は数万円から10万円前後が目安です。増築部分が未登記のままであれば、先に登記の状況を整理しておくと手続きがスムーズです。
固定資産税はどう変わるか
固定資産税は、毎年1月1日の時点の建物の状況をもとに課税されます。減築や一部解体で床面積が減ると、家屋の評価額が下がり、翌年度から税額が下がる可能性があります。自治体の課税課が現地調査を行うことも多く、登記の変更に合わせて申告の連絡をしておくとよいでしょう。
建物が一部でも残っていて、住宅として使える状態なら、土地の「住宅用地の特例」は原則として維持されます。200㎡以下の部分は固定資産税の課税標準が6分の1になるため、全体を解体して更地にするより、土地の税負担が低く済みます。
「建物は残す、増築部分だけ壊す」が有利なこともある
老朽化した離れや増築部分だけを取り壊し、母屋を残すなら、住宅用地の特例を保てます。将来売却や相続を考えている場合は、全体の解体のタイミングと合わせて、税負担と費用のバランスを考えて決めましょう。
税金の取り扱いは、建物の評価や自治体の運用で異なります。具体的な金額の見込みは、市区町村の課税課や税理士に確認してください。
業者選びと見積もりのポイント
この章のポイント
- 一部解体の実績がある業者を選ぶ
- 切り口の補修まで含めた見積もりを取る
- 補助金の対象かどうかも事前に確認する
一部解体や減築は、建物全体を取り壊す工事とは異なる技術と経験が必要です。業者を選ぶときは、次の点を確認しましょう。
- 一部解体や減築の施工実績があるか、写真や事例を見せてもらえるか
- 切り離し部分の補修(屋根、外壁、防水)の範囲と費用が見積もりに入っているか
- アスベストの事前調査を有資格者が行い、結果を報告してもらえるか
- 建築士や設計事務所と連携して、構造の確認を行ってもらえるか
- 工事の後、登記の手続きに必要な書類(取り壊し証明書など)を出してもらえるか
見積もりを比べるときは、壊す範囲を図面や写真に書き込んで、全社に同じ条件を伝えてください。壊す範囲の認識が業者ごとに違うと、金額の差が工事内容の差なのか、単なる条件の違いなのかが判断できなくなります。工事後に残る建物の状態(外壁の仕上げや屋根の形など)も、契約前に確認しておきましょう。
補助金は全部解体が前提のことが多い
空き家の解体に対する自治体の補助金は、建物全体の撤去を条件としている場合が多く、一部解体や内部解体は対象にならないこともあります。耐震改修の補助金の対象に、減築を含めている自治体もあります。
対象となる工事の範囲や補助額は、自治体ごとに大きく異なります。申請は工事の前に行うのが原則のため、契約の前に市区町村の窓口へ相談してください。
複数の業者を比べたいときは、解体工事の一括見積もりサービスを使うと、条件を同じ基準で整理しやすくなります。
一部解体・内部解体・減築についてよくある質問
建物の一部だけを解体してもらえる業者はどう探せばよいですか?
解体業者のほか、リフォーム会社や工務店が対応する場合があります。減築のように構造に関わる工事は、設計ができる工務店や建築士と連携する会社に頼むと安心です。
スケルトン解体をした後の建物は、そのまま住めますか?
スケルトン解体は、内装や設備を取り払った状態のため、そのまま住むことはできません。壁、床、天井、水回り、電気配線を新しく作り直す、大規模なリフォームの前工程にあたります。
登記が必要かどうかは、自分で判断できますか?
床面積や建物の種類が変わるかどうかが目安になります。判断に迷う場合は、法務局の窓口か土地家屋調査士に、登記簿の内容と工事の内容を見せて確認してください。
一部を壊したら、固定資産税は必ず下がりますか?
床面積が減れば家屋の評価額は下がりますが、金額は自治体の評価によります。壊した直後に自動で見直されるとは限らないため、登記の変更後に、課税課へ連絡しておくと安心です。
一部解体・内部解体・減築についてまとめ
この記事のポイントをまとめます。
建物の一部だけを壊す工事は、費用と手続きの両面で、全体解体より慎重な判断が求められます。実家をどう使うかの方針を先に決めておくと、迷いが少なくなります。
費用や手続きは、建物の状態や自治体によって異なります。詳しいことは、建築士や土地家屋調査士、市区町村の窓口に確認してください。